赤い結い紐
ふらふらと歩く千珠の後ろ姿を目で追っていると、「ねえ」と由加里が言った。

「なんだ?」

「あんたさぁ、結局どうする気なのよ?」

由加里がタバコに火をつけて問いかける。

「わかんねーよ」

「わかんないじゃないでしょ?」

「じゃあ、どうしろって言うんだ?」

声をほんの少し荒げて武が問い返すと、

「鈴、振ってみれば?」

にやっと笑って、由加里が言った。

「おまえ、本気か?」

「ええ、もちろん」

千珠が戻ってこないことを確かめ、由加里が続ける。

「だってさぁ、結局あんたは何にも覚えてないんでしょ? 違う?」

武は無言で質問に肯定を表す。

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