赤い結い紐
「だったら振ってみればいいじゃない。もしかしたら、千珠かもしれないんでしょ?」

「違ったらどうするんだ?」

「そしたらその時よ」

両手を広げ、あっけらかんと由加里が言った。

「その時って、おまえ簡単に言うけどなぁ」 

呆れたように言葉を続けようとする武をさえぎるように、

由加里が目の前に火のついたタバコを突きつけた。

「あんたは千珠のこと嫌いなの?」

「いや」

「でしょ? なら振ればいいじゃない」

由加里が言った。

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