赤い結い紐
怒られるだけならまだマシだ。

嫌われるかもしれない。

それも口も聞いてくれないぐらいに。

それはイヤだ。

さっさとしないと武が帰ってきてしまう。

焦る気持ちを落ち着けながら、必死に隠し場所を考えた。

千華は両手で握り締めていた桐の箱に目を落とした。

心なしか、うっすらと輝いているような気がする。

抗えない力を感じ蓋を開けると、真っ白な綿に包まれて銀の鈴があった。

千華は引き寄せられるように、鈴に手を触れた。

その瞬間、頭の中に映像が浮かんだ。

あの時、レイラが見せてくれたもの。

そして、見せてもらった覚えのないものまで……。

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