赤い結い紐
頭の中の顔と、目の前の顔がぴったりと一致して重なった。

「おまえだったのか」

武の視線をふいっとかわして、レイラが言った。

「で、結局その子に決めたのかい?」

思い出したように振り返ると、千珠はベッドの上に倒れこんでいた。

「何をした?」

「そんな顔するんじゃないよ。ちょっと邪魔だから寝てもらっているだけだよ」

懐(ふところ)から扇を取り出して、軽く打ち鳴らす。



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