赤い結い紐
「その子でいいんだね?」

「ああ」

武はレイラの視線をまっすぐに受け止めて頷いた。

「この子じゃなくて、その子なんだね?」

いつのまにかレイラの隣には、ウサギのスリッパを胸のところで抱きしめた千華が立っていた。

武は千華に見つめられながら、ゆっくりともう一度頷いた。

「そうかい。じゃあ千華、あんたは先に行ってな」

「そんな。母様(かあさま)……」

千華が非難めいた目でレイラを見上げた。

「おや、挨拶もなしに行くのかい? あたしは別にかまわないけど」

意地悪そうに微笑んでレイラが言った。

< 283 / 292 >

この作品をシェア

pagetop