赤い結い紐
訳が分からず二人のやり取りを見つめていると、千華が口を開いた。

「約束……」

「んっ?」

「約束、覚えてる?」

「約束ってなんだ?」

千華の言葉の意味がわからず問い返すと、

「ほら、あのときの」

と言って、千華がTシャツをめくるまねをした。

「ああ、覚えてるよ。何でも言うこと聞いてやるって言ったやつだろ?」

思い出したように武は呟く。

「待ってるから……死んだら迎えに来るからね」

千華がそう言って、微笑んだ。

満足そうに頷いたレイラが扇を宙で一振りすると、千華の姿が音もなく消えてしまった。

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