赤い結い紐
武がベッドの上の千珠を見つめていると、

「じゃあ、あたしも行くよ」

誰に向けるでもなくレイラが言った。

「ああ、そうそう、その前に」

思い出したように呟いて、レイラが扇をさっとかざす。

「このままじゃ、あの子が少しかわいそうすぎるからねぇ」

そう言って微笑むと、千華のときと同じように、レイラの姿が溶けるように消えた。

武の身体がふんわりと柔らかな風に包まれた。

肺いっぱいにビャクダンの香が入ってくる。

すると、遥か昔に無くしたはずの、記憶のカケラがよみがえった。


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