赤い結い紐
ここ一週間程、由加里の言葉通り、駅前の定食屋に通い詰めてはいるのだけど、

あの日以来、朝も昼も夜も、寂しそうな瞳の男には会うことができなかった。

それでも探してしまうのは、もはや興味を通り越して意地なのかもしれない。

何故か気になって仕方がなかった。

もう一度会えば、その原因もわかるかもしれない。

そう思い、探し続けている。

それに元々あの定食屋は気にいっていたので、

毎日通っていても別に苦になることはなかった。

駅前の広場には、忙しそうに行き交う人が溢れていた。

千珠は迷路のような色とりどりの人の群れに、微かな期待を込めて視線をめぐらせる。

今日もいないか……。

がっかりしたような、それでいて少しだけ安心したような気分になり、

ため息をついて定食屋の自動ドアをくぐった。


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