赤い結い紐
「でもね、ものすごく悲しそうな目をしてたの……上手く言えないんだけど」

千珠は思い出すように宙を見つめ、呟いた。

見つめる先には、いろんな形のいろんな色をしたお酒のビンが並んでいた。

由加里も一緒になって、赤い液体の入ったカティーサークのボトルを見つめる。

「よくわかんないけど、あんたはその痴漢クンにもう一度会いたくて、

毎日駅前を探してるってことなのね?」

たっぷりと時間をかけて考えたあと、由加里が言った。

千珠は視線を動かすことなく、黙って頷く。


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