赤い結い紐
一度だけレイラに見せたことはあるのだが、

いきなり手に取り振られそうになったので、

それ以来、彼女の目に触れないように隠していたものだ。

武自身、この箱を開けるのは久しぶりだった。

記憶は定かではないが、たぶんレイラに見せたときが最後だったと思う。

武は開いたままの桐の箱を床に置き、

その前に腰を下ろして、しばらくじっと見つめていた。

「やっと、これを鳴らす時が来るのか……」


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