赤い結い紐
「あの、訊いてもいいですか?」

「ああ」

「なんで、服をめくろうとしたんですか?」

「ああ、そのことか。ちょっと人を探してたんだ。

悪かったな、謝るよ」

言って、思い出したように頭を下げた。

「あ、いえ、そうじゃなくて。

なんで人を探すのに、服をめくる必要があるんですか?」

またその質問かよ……。

武はうんざりしたように深くため息をついて、

ウォッカライムを一息で飲み干した。

口の中に微かな苦味が走る。

千珠は待てと言われた犬のように、じっと武の顔を見つめている。


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