赤い結い紐
「あんた、名前は?」

「千珠です」

「一応聞くけど、あんた胸の下にホクロとかある?」

言って、あるわけないよな、と言葉を漏らした。

「ありますけど……」

俯いて、千珠が遠慮がちに小さく答えると、

「ほんとか? ちょっと見せてくれ」

そう言いながら、武が千珠につかみかかろうとする。

「やだ、待ってください」

必死でワンピースの裾を押さえて、千珠が椅子から滑り落ちた。

そしてそのまま身体を庇うように抱きかかえ、

下から責めるような目で見つめてくる。

「悪い」

武は短く呟いて千珠の手を取り、抱きかかえるようにして立たせてやった。


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