赤い結い紐
炎は小屋を形どっていた木材をあらかた燃やし尽くしてしまうと、

突然降り出した雨によって完全に鎮火(ちんか)した。

それを見て村人達が、一人また一人とその場を去っていく。

最後の一人がその場を立ち去って数分たつと、

ほとんど炭になってしまった木材の下から、のそりと武が起き上がった。

そしてしばらくその場に立ち尽くし、

身体にこびり付いていた炭や燃えカスが雨によって流された頃、

重い足を引きずるように歩き出した。


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