炭酸水にダイブ
仕方なく手に取った携帯電話。急に感じた光に少しばかり目を瞬いて、適当なサイトを開いて流し読む。ケータイやパソコンの光は余計に眠れなくなる、とかなんとか聞いたような気がするけれど、本当かどうかもわからないので一瞬で頭の隅に追いやった。
暫くして、つまらない記事を追いかけるのを止めて時間を確認すると、まだあれから20分しか経っていないことに気付いて辟易する。誰に、というわけでもないけれど。
はあ、と吐いた息は自分以外誰もいない部屋に消えた。
兎に角、目を閉じていればその内眠気もやってくるだろう、なんて。それが出来なかったからこうしてもだもだと起きているというのに。
一向に眠くならないことに段々とイライラが募る。
もうっ、どうして眠れないのよ!
怒りをぶつける対象もなく、発散されない苛立ちを叩き付けるように、枕にぼふんっと顔を埋めた。このまま飛び散ってしまえばいいのに。
まるで、思い通りにならないことに駄々をこねる子どものような気分だと、そんなことを考えてまた少しイライラ。
いっそのこと朝まで起きていようかという思いが頭の中を通り過ぎる。そんな体力もないくせに。
ほんとう、なんで、今日に限って。
昼間、普段は飲まない炭酸を飲んだせいだろうか。仕方がなかったのだ。先輩が間違えて買ってしまった、自分は飲めないから私にって。私だって炭酸なんて好き好んで飲んだりしないけれど。
好意を拒否するのが、昔から苦手なのだ。別に炭酸が嫌いなわけでもないので受け取った。
しかし、珈琲じゃあるまいし、カフェインなんてものが炭酸に含まれている筈もなく。そのせいで眠れないなんて有り得ない。
つまり、今こうして眠れずにいることに炭酸なんてこれっぽっちも関係ないのだ。それくらいわかっている。ただ、何かのせいにしなければやっていられないだけ。
まったく、どうして睡魔というものは来てほしくないときには嬉々としてやってくる癖に、やってきてほしいときには影も見せないのだろうか。それこそ、悪魔の名に相応しい所業である。