あたしの証【完結】
また店員に促されて、あたしは椅子に座る。

美容室に行ったことないあたしは下をずっと向いていた。
なるべく鏡の中の自分を見ないように。

さっきドレッサーで見た自分のやつれた顔が浮かぶ。


見たくなくてあたしは前を見れずにいた。


だけど、美容師さんが顔を上げてと言うから仕方なしに上げる。
だけど、鏡は見ないようにして。


さっき泣いてボロボロだったメイクを丁寧に落としてくれて。

綺麗にファンデから、シャドウから全て塗られていく。
メイクしてる間は鏡を見なくていいから、素直に目を閉じた。


それと同時に髪の毛を、コテでくるくるにされる。
ワックスをもみ込まれて、逆毛を立てて二人ががりであたしの髪の毛をセットしてくれる。


「終わりましたよ」


そう、言われてあたしは恐る恐る目を開けて鏡を見た。







「………これ…あたし?」



見上げると、後ろには満足そうな顔をしたゆうや。

見たことない自分の一面に、ゆうやは気付かせてくれた。
こんなにもメイクや髪形や洋服で人は変われるんだ。

今のあたしなら自信を…持てるような気がする。


「じゃ、行こうか」

「……どこへ?」

「俺の店」


綺麗になった今のあたしなら。
この人のお客さんでも引けはとらないかもしれない。
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