あたしの証【完結】
「とにかく冷やせ、りな」


そういうと、りなさんはタオルを持って来て、水で濡らしてあたしの証のあったとこへそっと当ててくれた。
まだ感覚が無いあたしの皮膚。


痛くなんかない。

あたしがなつきにしてきたことは。
きっと。


こんな痛みよりももっと痛かったんだって。
そう、思うから。






あの日。
なつきが最後に見せた涙が。
ずっとあたしから離れない。




それから。
しばらく経っても二人はあたしに傷のことを訊いてきたりはしなかった。

詮索しないのは、きっと。
二人も詮索されるのが嫌だから。

そんな想いわかるから…。


だから。
あたしをほっといてくれるんだと思う。


ひきつったみたいなあたしの皮膚。
鏡で見るけど…痛々しかった。

微かに残るNの文字。


それをそっとなぞる。
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