あたしの証【完結】
………逃げよう。


そう、心に決めたあたしは時間になったと同時に更衣室へ駆け込み着替えて逃げるように本屋を出た。
だけど、そこには既に彼がいた。


…手遅れだったか。
どうしてあたし、正直に時間言ったの…。

てか、なんであたしすぐ出てきたの。
もっと更衣室いればよかったのに。


ああすればよかったと、後悔だけが残る。


「あ、木下さん」

「あ。あはは」


苦笑いするあたし。
てか、苦笑いしか出来ないあたし。


「よく逃げなかったね」

逃げようとしてたんだけども。
あたしはバツ悪くまた笑うしかなかった。


「この後暇?」

「あー忙しい」

「嘘でしょ」


すぐに見破られるあたし。
なんでわかんの?


「ぷ!」

そんなあたしの顔を見て、吹き出したなつお。
それにあたしは訝しげな顔をする。


「な、なに?」

「だって、なんかくるくる表情変わるし。
てか、図星って顔に書いてある」



そんで、また彼はぷくくって笑う。

途端に恥ずかしくなった。
なんでこうもあたしはわかりやすいんだ。


…?
そう思う自分に、少し違和感を感じる。
でもすぐになつおに話しかけられて、そんなことは忘れてしまった。
< 14 / 329 >

この作品をシェア

pagetop