あたしの証【完結】
丁寧にお辞儀をしてさくやさんはあたしの隣に座る。
変わらない、さくやさんの姿。


「さくやさん」

「覚えててくれた?
久しぶりですねー」

「本当に!覚えてたよ!」

「嬉しいな。
あかりちゃん、あれからお店来ないから心配だったんだけど…
ゆうやさん見てたら安心しちゃった!」

「…どういうこと…?」

「なんか、最近丸くなったってゆうか。
柔らかくなったっていうか。
なんて言ったらいいか、昔みたいな冷たさがなくなったっていうか」

「……」

「きっと、あかりちゃんのおかげなんだって俺、思ってた」


満面の笑みで話すさくやさんに、あたしは俯きながら答えた。


「…そんなことない。
あたしの方がいつも救ってもらってる」

「え?」

「ゆうやはいっつもあたしに優しくしてくれて、あたし。
いっつも心配ばかりかけて。
ゆうやって…まじでいい男なのにね…」

「……なのにって、もっと自信持っていいですって!
俺、こんなゆうやさん見たの初めてだし、あかりちゃん連れてきてからだし!
二人の空気ってゆうか、なんかそれが他とは違うというか。
すぐにわかったから…」


さくやさんはまだ勘違いをしてる。
でも、それは否定しないでおく。
否定したとこで説明なんて出来ない。
りなさんのことも言えないし。


「だから、ゆうやさん前にも増してもてもて!
昔からNo1だったけど最近の指名数とかハンパじゃないし。
……って、心配になるよね…ごめんなさい」

「あ、いや。
大丈夫…です」

そっか。
ゆうや、前にも増して指名増えてるんだ。
大変だな。



「安心していいから。
俺が保証します」

「…うん」


さくやさん、いい人だなあ。

なんていうか。
こんなにも優しい人って溢れてたんだな。
あたしは今まで深く付き合うのを避けて来たから。
だから、優しくされると戸惑ってしまう。
甘えていいのか。
どう、受け止めていいのか。

少しずつ…受け止められるようにはなってきたけど。


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