あたしの証【完結】
あたし達が向かったのは、本屋から五分ほど歩いた先にある24時間営業しているファミレス。
中に入ったあたし達は、店員に案内されて席につく。

メニューを開きながら、なつおはあたしに言った。


「何食べる?俺のおごりだから」

「え?悪いって」

「いいの、こう見えてちゃんと稼いでるし」

「何やってんの?」

「…秘密」

「何それ、怪しすぎる」

「別に怪しい仕事じゃないよ」

「じゃあ、教えてよ」

「……これ」


そう言って、なつおは腕まくりをした。
そこにはなんかの模様が入っていた。


「…タトゥー…?」

「そ」

「で?これがなんなの?」

「これを彫るのが俺の仕事」


それにあたしは目を見張った。


「ええ!!」


彫るって、凄くない?
あたしと同い年で出来るの?


「ま、まだ見習いだから彫ったことないけど」

「そうなんだ」

「彫師って、絵のセンスとかあもるし、今大学行く傍らそこで猛勉強中」

「……」


そう、言うなつおの目は綺麗だった。
なんか、あたしの淀んでいるはずの目を見てほしくなくて。
目が見れなくなる。


「なんか、凄いな」

「何が?」


目線をずらしたまま言う。


「夢とかあって。
あたし、なんもないし。
友達だっていないし。
彼氏もいないし。
なんもないや」

「何ゆってんだよ。まだ、19だろ?」

「もう、19だよ」


そう、本当に。
もう、19だ。

だけど、あたしには何もない。
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