あたしの証【完結】
「あ、まだ吸ってたのに」

「病み上がりなんだから大人しくしてくださーい、あ、来た」


一台のタクシーが来て、あたしとゆうやは乗り込んだ。
りなさんは退院祝いだって、家で豪勢な料理を作っている。
早く帰ってあげなきゃ。




ゆうやはまたタバコに火を点けて、ゆっくりと吸い込んだ。
煙を少しずつ吐きながら、またそれを繰り返す。
あたしを見ずに。




ゆうやは。



「なつきに会いに行くのか?」



あたしがこれから話そうとしてたことを、先に口にする。
何でれんといい、ゆうやといい、こうもあたしのこと理解してるんだろうか。



「…うん」

「お前はいいのか、それで」

「最後の賭けなの」

「賭け?」

「あたし、また彫ってもらうんだ」

「彫る?」

「うん、なつきの名前」

「は?」


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