あたしの証【完結】
「なつき以外ダメなんだ!
お願い、お願いします…」

縋るように腕にしがみつくと、なつきは唇を噛んで悔しそうな顔をする。
そして、諦めるように溜息をつくと


「……いいよ」


あたしの一生のお願いを聞き入れてくれた。


「…だけど、これから俺まだお客さんいるから隣の部屋で待ってて」

「…うん、うん!待ってる」


あたしは彫ってもらえる。
それだけが嬉しくて嬉しくて。


もう、これが最後だとしても。
あたしはそれでも本当によかった。

後悔をするなら、どこまでもしそうだったからすることを辞めようと決めたから。




あたしはつい立てのすぐ横にある部屋に案内された。
あたしに何も言葉をかけず、部屋を出て行ったなつきをじっと見ていた。




なつき。


会えばやっぱり好きだと、彼以外好きになれる人はいないと、そう確信した。

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