あたしの証【完結】
あたしはいつだって。
被害者だった。


でも、今はあたしは人を怖がったりしない。
孤独だとも思わない。



だって。
なつおがいるから。



あの一夜からあたしはなつおと、心の距離が更に近づいたような気がして。
毎日が幸せだった。



あたしの初めての相手がなつおで本当によかった。



それから暫くして。
あたしはなつおにタトゥーを入れてもらうことになった。


Natsuki。
筆記体で腰にそう入れた。

初めてのタトゥーは痛みよりも嬉しさが勝っていた。
ちくちくと確実にあたしの肌に入るあたしの証。


あたしがなつおを好きだという証。

大好きな人に。
大好きな人の名前を彫られる。


あたしは狂っているのだろうか?
これがとてつもなくあたしにとって幸せだということ。


別れたらその名前どうするの?
そんなこと。
知らない。
あたしはなつおを手放す気なんてないんだから。
お互い、そうだって思ってた。


あたしに入れ終わってから、なつおは簡単にアフターケアの方法を教えてくれて。
あたしはこくこくと頷いた。
まだ入れたらいけないらしいから、きょうさんには秘密にしてねって言われて。
またこくこくと頷く。


あたしは家まで送ってもらってから、自分の部屋の姿見でまじまじとそれを見た。


あたしとなつおが繋がってると。
本気でそう思えた。

触ると皮膚が浮き上がって、でこぼこしている。
本当に消えないこの証。



なつお…

あたしとなつおは永遠だよね…?


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