あたしの証【完結】
部屋の前に来たが焦ってしまって、鍵がうまく入れられない。
手が震えている。



落ち着け。
落ち着け、自分。


気持ちを落ち着かせるために深呼吸を二回する。


…どうにか、少し落ち着いた。


それから鍵穴へと鍵をゆっくりと差し込む。




がちゃりと扉の開く音がした。
生唾を飲み込みながら、あたしは部屋へと入る。

なつおの部屋。
そこで。


いつもはしない香水の匂いがした。





…直感でしほさんの匂いだと気付く。

それから、なつおの部屋に落ちてたものを見て目を見開いた。

あたしはぽたぽたと落ちる涙を拭う事なんて出来ず、なつおの部屋を飛び出した。


玄関に夕飯の材料をそのままにして。



そこで見たのは。
女の人のモノと思われる着替え。
乱雑に置かれた下着と、スカートやトップス。
きっとしほさんの。



なつおの部屋に。
何で?
何で…?

それしか思えなくて。


あたしは無我夢中で走っていた。
行くあてもなくて。

まだ家には帰りたくなくて。


近くにあった公園まで走ると、ベンチを見つけてそこにふらふらしながら倒れ込むように座った。
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