あたしの証【完結】
運動なんて普段しないから、呼吸が落ち着くまでに時間がかかる。
まだ頭がうまく回らない。


動揺しすぎて、あたしは自分の手がずっと震えてることに腰かけてから初めて気付いた。
震える手を抑えるためにカバンに入れてたお茶を取り出して一口飲み込む。


一度、息をつく。


それから、またあの情景が浮かんで、じわじわと涙がわき出てくる。

散乱していた女の人の着替え。
下着。



それを思い出して、あたしは立ち上がるとベンチの裏に回り嘔吐する。
気持ち悪い…。

運のいいことに、近くにあった水飲み場で口をゆすいだ。

何度かゆすいで。

またあたしは涙を流した。



嘘だった。
あの微笑みも。
なつおはあたしに嘘ついていたんだ。


あたしのことを好きだって言ったことだって。


嘘だったんだ。
バカみたい。

あたし一人なつおを好きになって。
なつおには他の女の子がいたんだ。

あたしだけでなく。
しほさんがいた。



そうだよね。
しほさん、綺麗だし。
あたし、負けてるし。

悔しくなって、また涙が出てくる。
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