あたしの証【完結】
「…あ、かり…」


はあはあと肩で息をするなつお。

こんな必死にあたしを捜してくれる人があたしを裏切るなんて…。


嘘だよね?
あたし、信じていいんだよね?



「何…こんなとこで…やってんだよ」



まだ呼吸が荒いなつおは途切れ途切れにあたしに話しかけた。
あたしはしばらく沈黙してから意を決して、口にする。



「……なつお…浮気してるの?」




真っ直ぐになつおを見据えて言った。

どんな答えも受け入れる覚悟はしていた。
浮気であろうとも…。
聞かないとあたしは壊れてしまいそうだったから。


あたしはもう、しほさんの言葉に振り回されたくない。
なつおの言葉を、真実を知りたかった。



なつおの表情からは何も読み取れない。

あたしはなつおの言葉を待った。



「…どういうこと?」


本当に意味が分からないのか、それとも分かってて言わせるのか。



「………しほさんがマンションから出てくのを見た。
なつおの部屋には女物の洋服があった。
だから…浮気してるのかって」

「………………」



それに俯き、なつおは珍しく黙りこんだ。




次になつおから発せられた言葉はあたしが予想もしてなかったもので。


あたしが崩れ落ちるには、十分だった。
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