あたしの証【完結】
突然の声にあたしは顔をあげて、声のする方を見た。

扉にもたれかかって、あたしを見下ろしている男の人。



誰…?

長い髪を一つに結んでいて、顔には不精ひげ。
吊りあがった目をしていて、その目はあたしを見下ろす。
すらっとした体型に、大人っぽいモードな服装がまたお似合いだった。


銜えていたタバコの煙を吐き出すと、また彼が口を開く。



「ずっと辛気くせえ顔してっからなつきに捨てられるんだよ」

「なつきのこと知ってるの?!」


突然のその名前にあたしは叫ぶように問う。
だけど、彼は表情変えることなく言った。


「……あんたがずっと触ってるから」

「…へ?」

「腰のタトゥー」


………ハッとしてあたしは腰を触った。
でこぼこしてるそのあたしの証。


………あたしだけの証。




あたしは。
また溢れ出る頬を伝うそれを止めることなんて出来なかった。
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