あたしの証【完結】
さっぱりとしたあたしの鼻孔をくすぐるこの香り。
食欲を誘うその匂いにあたしは、空腹だったのを思い出した。


ぐるるるるる…

そうやって、思い切り鳴るあたしのお腹。

と、同時にぶはっと笑い声が聞こえる。
笑い声のする方を覗こうとするより先にゆうやが顔を出した。



「どんだけ腹へってんだよ」


まだお腹を抱えて笑っている。
少し恥ずかしくなったあたしは髪を乾かさないまま、リビングに向かった。
だけど、すぐにゆうやに制止される。


「おい、髪は乾かしてこい」

「…はい」


それしか言えなかった。

あたしはゆうやがわからなかった。
こんなわけわからない女拾って。
何が楽しいんだろう。


風呂場の前にあったドレッサーに、ドライヤーがあったからそれを使う。
ゆっくり全体を乾かしていく。

簡単にセットしてあたしはリビングに出た。


「あかりちゃん、出来たわよ~!」

「え?」


テーブルにはスクランブルエッグと、サラダと、バタートースト一枚。
朝食だった。


「こっち座って食べてね」

そう言いながら椅子を引いてくれた。

素直にそこに座ると、あたしは置いてあるフォークを持った。
ゆっくりと口に入れる。



「……おい…しい」


優しい味。

気付くと。
またあたしは涙していた。
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