あたしの証【完結】
ドレッサーの鏡横にはライトがあって、自分は女優にでもなったかのような錯覚を起こしそうになる。




だけど。
鏡の中の自分は。

頬がへこんでいて。
顔色もよくなくて。
見るだけでげんなりした。


あたしのことを好きな人なんて…
やっぱりいないんだ。
そう、思った。



泣きそうになるのをぐっと堪えて、あたしはメイクを開始する。
簡単に保湿してから、ファンデーションを伸ばす。
アイブロウをして、ビューラーをしてからマスカラを塗る。

シャドウは塗らない。
アイラインだけ薄く引くと出来上がり。
簡単なあたしのメイク。

後はいつもならこの後リップを少し。
だけど、人のだし、あたしは塗らないでおいた。



完成したあたしは部屋を出る。


「…もう終わったの?」


あまりのメイクの早さにゆうやが驚いてあたしを見た。
多分、五分と待ってない。

でも、あたしは着飾る必要はないと思ってる。
そういうのって、生きる目標がある人のすることでしょ…???
< 95 / 329 >

この作品をシェア

pagetop