あたしの証【完結】
「でも、あかり薄くても可愛いのな」



ゆうやが発した、普段聞きなれない言葉に目を白黒させる。

あたしが可愛い…?



「どうした?」

「可愛い…?」

「…可愛いと思ったから言っただけだけど…」


不審げに聞き直したあたしにむすっとしながらゆうやは答えた。
普段、仕事でいくらでも言ってるのだからこれぐらい普通なのかもしれない。

調子に乗るとこだった…。



自分の中で納得しながら、あたしはゆうやを見た。
だけど、ゆうやはそんなあたしの心の中を見透かしたようで。


「…俺、別に仕事でもお世辞は言わねーから」



その言葉が静かにあたしの中に沁み渡る。


あたしはなんていい人と出会えたんだろう。
拾ってくれたのが、この人で。
本当に本当によかった。


「ありがとう」



あたしは今きっといい笑顔をしてたに違いない。
だって、ゆうやもあたしのことをまじまじと見てからほんの少しだけど笑ってくれたから。
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