Bloom ─ブルーム─
私が友里亜に、言ったんだよなぁ。

『傷つけて傷つけられても、それでも大事なものつかみとって』って。

それで友里亜はちゃんと自分で答えを出して、前を向いて歩き出したんだ。

失恋というものに傷つき、つかみとる気力なんて私は失ってるというのに。

「杏奈ちゃんからも、メール来たよ?『ごめん』って1言だけだったけど」

「それだけ?」

「うん。でも、多分それだけ送るのにすごく勇気がいったんじゃないかなーとか、思った」

確かに。

あの勝ち気な杏奈が自ら謝るなんて、そうあることじゃなさそう。

「よぉ」

その時、登校してきた直人が、真っ直ぐ私達のとこに来て挨拶した。

友里亜は嬉しそうに微笑む。

直人もひとつ大人の階段を上ったらしい。

「ったく、昨日結局追い付いちゃって、一緒に帰るハメになったじゃん。お前のせいだぞ」

「杏奈と?一緒に帰ったの?」

「本当アイツしつこい。やっぱ無理」

そう言いながらも、少しだけ表情が晴れてることにホッとした。

『男にはやらなきゃならない時があるんだよ!』

私が直人に言ったんだよなぁ。

それで立ち上がり、落ち込み、再び立ち上がった直人。

一回り大きくなったように見える目の前の2人。

立ち止まり落ち込むだけの私。

なんだろう、この差。

強気で人の背中を押すのは簡単だけど、いざ自分のことになると、途端に臆病になるんだ、私。

知らなかった。

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