Bloom ─ブルーム─
昨日、どっちがどっちを送るかでモメた私と長谷川大樹。

『私が送らなきゃ、戻ってきた意味がないじゃないですか!』

そういうと

『情けないな、俺』

って、ポツリとこぼした彼の声が、今でも耳から離れない。

1人にしたくなかった。

それだけなのに、もしかしたら男としてのプライドを傷つけたのかもしれない。

結局、彼を送り届けて、自転車借りたまま帰宅したけど。

今日長谷川大樹はどうやって登校したんだろう?

私はいつもより早起きして、初のチャリ通を楽しんでみたんだけど。

ボロボロの彼の自転車で。

それで、その鍵をどう返すかで、未だに悩んでる。

ジメジメ考えてる自分に、自分で苛立つ。

過去の恋は恋と呼ぶには幼すぎたのかな。

ただ楽しいだけの今までの恋に比べて、失恋から始まったこの恋はひどく苦しい。

同時に自分の可愛いげのなさにガッカリだ。

ビンタしたり、胸ぐらつかんだり、男をチャリの後ろに乗せて送り届けたりしちゃうんだから。

『典型的な女の子って感じの……可愛い……人?』

ナナさんを思い出してそう言った長谷川大樹。

私も、普通に可愛い女の子になりたい。

可愛いって、なんだろう?

どうしたらなれるんだろう?

そんな事を、バカみたいに昨日の夜からずっと考えてる。

何、このクズグズ女。

人の背中を押してる場合じゃないじゃん!

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