Bloom ─ブルーム─
まぁ、悪く、ないかな。

でも、いつもと違う自分が目の前に表れると妙に照れ臭い。

一瞬だけ見て、すぐに鏡を伏せた。

「ねぇ、里花、もしかして恋してる?」

動揺してる私の顔を覗きこみ、友里亜が聞く。

「なっ、ななな何言ってるの?それは友里亜でしょ?」

「うん、そうだけど……でも、里花、最近急に可愛くなった気がするから。

女の子は恋をするたびキレイになるんだよ」

「……」

もう1度、伏せた鏡を上げて見てみる。

ダメだ。やっぱ、キャラじゃない!

「友里亜、私1時間目サボるわ。腹痛で保健室に行ったことにしといて」

私は立ち上がると廊下に飛び出した。

「里花?どうしたの?」

友里亜の驚いた声が後ろから聞こえてたけど、振り返らずに廊下を走る。

教室を飛び出したところで行くあてなんてないんだけど。

ポケットには長谷川大樹のチャリの鍵がひとつ。

そして、携帯。

昨日別れ際、私は紙とペンを取り出すと自分の携帯番号とアドレスを書いて彼に無理矢理渡したんだ。

『寂しくなったらいつでも参上しますから。私は喋る花子だから』

そう捨て台詞を残して。

サヨナラも言わずに自転車を走らせた。




電話なんて来るはずないとわかっていながら、それからずっと手放せなくなっている携帯。

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