Bloom ─ブルーム─
何を期待してるんだろう。

携帯を持ち歩いて、足が勝手に向かうのは屋上へ続く階段。

屋上の扉の前に着いたとき、1時間目の始まりのチャイムが鳴った。

いるはずないだろうし、ドアは開くはずもないだろうけど、自然と心臓が強く波打つ。

いるはずないよ。

もう1度自分に言い聞かせ、扉に手をかけた。

その取っ手はなぜか回り、力を込めると、開くと同時に爽やかな風が舞い込んでくる。

開いてる。

波打つ心臓がさらに激しさを増す。

でも、辺りを見渡しても、長谷川大樹の姿はどこにもなかった。

「鍵、閉め忘れたのかな……」

忘れんぼう&落とし物大将。

ついでに、昨日私がつい口にしてしまったことも忘れてくれたらいいのに。

長谷川大樹が好きな場所まで歩くと、その空に飛行機雲がスーッと一筋伸びているのを見つけた。

いい天気。

水色の空に白の飛行機雲の軌跡がどんどん伸びて行く。

強すぎず弱すぎず、ちょうどいい風がいろんな迷いをかきけしてくれるみたいで、憂鬱だった気分が少し晴れた。

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