Bloom ─ブルーム─
由紀ちゃんは相変わらず豪快で、私達のやり取りにガハハハと大声で笑っていた。

「健!昼ご飯はー?」

2階に向かってかけた由紀ちゃんの声に、健さんは「俺の主食はマックのチーズバーガーだから」なんて答えてる。

ラーメン屋の1人息子なのに。

「あ、そうだ、来週の金曜ヒマ?」

「来週?の、金曜?」

「うん。8月2日なんだけど」

ドキッとした。

その日は私の誕生日だから。

まさかとは思うけどハッピーサプライズ?

なんて期待したのに。

「他の学校の奴らと合同でライブやるんだ」

誕生日と重なったのは、ただの偶然らしい。

でも、ライブ?

大樹先輩が歌うの?行きたいな。

「予定何もないです。っていうか夏休みは毎日ヒマですけど」

「うわっサミシーッ!て、俺もだけど。ちっちゃいライヴハウスなんだけどさ、じゃあ見に来る?」

うそ!誘ってくれるなんて。

大樹先輩の歌声聴くのは、学祭以来だ。

たまにここの2階で軽く歌うのは聴いていたけど、実際のライブとは力の入り具合が全然違う。

ステージで輝く彼。

想像するだけで胸が躍る。

「行く!行きます!絶対行く!」

私は勢いよく、はいはい!と、手を上げてアピールした。

「ははは、わかったよ。じゃあ、これあげる」

大樹先輩はポケットから手作りっぽいチケットを取り出し、私に手渡す。

私は初めて手にしたアマチュアバンドのチケットをまじまじと見つめた。

「──ブルーム?」

チケットの一番上には英語で“Bloom”と大きく記されていた。
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