Bloom ─ブルーム─
それを眺めて呆れたように微笑む大樹先輩。

けど

「電話してみようかな」

聞こえるか聞こえないかくらいのトーンで呟いた健さんの一言に、余裕そうだった大樹先輩の肩がピクンと揺れた。

このタイミングで口にする“電話”って、もしかして、ナナさんに……かな?

そんな事は私の口から聞くことはできないけど。

健さんにも。

大樹先輩にも。

大樹先輩は立て掛けてあったアコースティックのギターを掴むと、ポロンと弦を弾いた。

「ギター弾けるの?」

「んー?軽くね?」

ポロンポロンと柔らかな音色が少しずつ繋がり合って、メロディーを奏でてく。

知らないけど聴いたことがある。

「あ」

それは屋上で聴いた大樹先輩の鼻歌だった。

しばらく黙って耳を傾けていると、ギターのメロディーに合いの手を打つように、健さんから穏やかな寝息が聞こえてきた。

本当に寝ちゃったんだ?

健さんが眠ってしまうと、2人きりの空間に早変わりしてしまう。

意識した途端、急激に体温が上昇していくのがわかった。

けど、動揺の“ど”の字も知らない風な隣の彼。

ドキドキしてるのは、当然のことながら私だけ。

不公平だ。

「ピアス開けるとさ、運命変わるってあれは迷信だと思う?」

ギターを弾く指先を見つめてた私に、突然先輩は手を止めて聞いてきた。

先輩の耳には穴が3つ開いてる。

学祭以来、ピアスをつけてるとこを見てないけど。

「変えたかったんですか?」
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