Bloom ─ブルーム─
「バス乗って途中まで来たのに、今日の衣装忘れたの思い出して、連絡しようと思ったら携帯忘れてて。

とりあえずバス降りて一度帰って、衣装持って家出たんだけど、また携帯を持ってくるの忘れたこと思い出して、けど次のバス乗り遅れたらライブ間に合わないかもと思って」

はぁはぁと息を切らせながら言い訳した後、

「つまり、ごめん。……なさい」

頭を下げる彼。

「ぶぶっ。先輩ぽい。いいですよ、先輩が忘れんぼうなのは今知ったことじゃないし」

しょうがないなぁ、なんて顔を作って苦笑いしてみたけど。

実際心臓はバクバク。

諦めかけてた分、振り幅が大きすぎて。

ちょっとだけ指先が震えてしまった。

本当に、来た。

なんだか夢を見てるみたい。

「はい。すんません」

小さくなって謝る先輩が可愛い。

初めて見る私服も、可愛い。

Tシャツにジーンズの、シンプルな格好なんだけど、胸元にある2つのボタンを外して、そこから覗くチョーカーが可愛い。

シルバーのリングピアスが3つ、耳たぶで光ってる。

ライブで使うのかな?ギターケースを肩にかけていた。

「衣装とかあるの?」

「うん。俺は別にこのままでいいって言ったのに、勇がカッコつけたがって。お揃いでスーツ用意したんだよね。

それをすっかり忘れてて……はぁ。しかも携帯ないから今日一日連絡どうしよう」

そこまで聞いて、健さんからの電話を思い出した。

「そう言えば、さっき私の携帯に健さんから電話来ましたよ?大樹知らない?って」
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