Bloom ─ブルーム─
地下街へ続くドアが開くと、皮肉にもさっき大樹先輩が歌ってくれた曲が微かに聴こえる。
人が出入りする度に耳に届く、私の好きな曲。
ダンスミュージック風にアレンジされて、妙に軽快なその曲は、逆に悲しく聴こえる。
「あの歌、すごく良かったです」
「え……」
「きっと、天国まで届いたと思う」
「……」
「お母さんも喜んでますね。ちゃんと親孝行できましたね」
ナナさんが来たのは、もしかしたらお母さんからの大樹先輩へのプレゼントなのかもしれない。
歌をくれたお礼に。
もう、誰にも遠慮する必要なんかないんだから。
「もしかしたらまだナナさんどこかで待ってるかも。急げば間に合うかも。だから」
バイバイ、先輩。
きっともう、こうして並んで歩くこともないんだ。
この先、その隣はナナさんのものだから。
それで、私とここで別れたら、大樹先輩はナナさんの元へ走って行くんだ。
そしたら簡単に誤解がとけて、それで……。
深呼吸すると、私の手首を掴んでくれてるその手をそっとはがした。
もう2度とこうして捕まえてくれることなんかないんだろう。
そう思うと、そこに赤く跡を残す中途半端な優しさでさえいとおしく感じる。
「ナナさんのとこ、行って」
その背中をそっと押した。
なのに、ここはゆっくり振り返らず前に進むのが礼儀なはずなのに。
「里花はそれでいいの?」
なんて振り返る先輩。
良くないって言ったら、行かないでくれるの?
人が出入りする度に耳に届く、私の好きな曲。
ダンスミュージック風にアレンジされて、妙に軽快なその曲は、逆に悲しく聴こえる。
「あの歌、すごく良かったです」
「え……」
「きっと、天国まで届いたと思う」
「……」
「お母さんも喜んでますね。ちゃんと親孝行できましたね」
ナナさんが来たのは、もしかしたらお母さんからの大樹先輩へのプレゼントなのかもしれない。
歌をくれたお礼に。
もう、誰にも遠慮する必要なんかないんだから。
「もしかしたらまだナナさんどこかで待ってるかも。急げば間に合うかも。だから」
バイバイ、先輩。
きっともう、こうして並んで歩くこともないんだ。
この先、その隣はナナさんのものだから。
それで、私とここで別れたら、大樹先輩はナナさんの元へ走って行くんだ。
そしたら簡単に誤解がとけて、それで……。
深呼吸すると、私の手首を掴んでくれてるその手をそっとはがした。
もう2度とこうして捕まえてくれることなんかないんだろう。
そう思うと、そこに赤く跡を残す中途半端な優しさでさえいとおしく感じる。
「ナナさんのとこ、行って」
その背中をそっと押した。
なのに、ここはゆっくり振り返らず前に進むのが礼儀なはずなのに。
「里花はそれでいいの?」
なんて振り返る先輩。
良くないって言ったら、行かないでくれるの?