Bloom ─ブルーム─
「えー?どうしたの、急に?」

「付き合っていても、半分の気持ちはもしかしたら別の人を見てたりすることだって……あるんじゃないかな」

その意味は恋愛初心者の私には難し過ぎて、理解できない。

大樹先輩とナナさんの事を言ってるんだろうか?

けど。

「それは、許されないことかな」

まるで許しを請うみたいな顔をするから、私の為に言ってるわけじゃないように感じられた。

「ダメ、だよね。なんでもない。ごめんね。じゃ、行かなきゃ」

躊躇いがちに進みだした友里亜の背中に、私はかける言葉を見つけられなくて。

迷ったまま、立ち尽くすしかできない。

窓の外には、杏奈の隣を歩く直人の姿が見えていた。

大樹先輩なら、言うだろうか。

『もし壊したくない大切なものなら、きっと友里亜ちゃん自身が気づいて、なんとかするさ』って。

こんなときでも大樹先輩の言葉を探してる私は、やっぱり、“未練がましい”。

今、屋上で風を吸い込むことがでたら、心の中で引っ掛かるモヤを吹き飛ばすことが出来そうなのに。

もうあの場所へ足を踏み入れることは許されない。

仕方ないから教室の窓から突き抜ける青を見つめても、飛行機雲さえ見せてくれないイジワルな空。

虹だって、紅葉だって、見えるはずもない。

次の季節を見つける切符も、なくしてしまった。

ただ、虚しく揺れるミサンガを、どうすることもできずに持て余すだけ。

しばらくして、友里亜達に続いて出てきた大樹先輩が自転車置場の屋根に隠れて見えなくなると、私は鞄を掴み教室を出た。
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