Bloom ─ブルーム─
「どうりで見かけないと思ったら、大樹が出てくの確認してから帰ってるわけだ」

玄関に着くと、私の靴箱の前に腰かけてる男子が、ふんっと鼻で笑った。

私を見上げて、やっぱり「ばっかだなぁ」って呆れるその人は、健さん。

あれ?さっき帰らなかったっけ?

「急用で戻ってきてみたら、マジでグッドタイミング」

「急用なら、こんなとこで座ってる場合じゃないんじゃないですか?」

「ん?だって、急用ってこれだもん」

と言って指差すのは、健さんの目の前に突っ立ってる私。

私??

「ねー。大樹のこと、もう諦めちゃったの?」

諦めるも何も、とっくに失恋しちゃってるんですけど?

「恋心はキレイさっぱり、美容室に捨てて来ました」

平静装って靴を履き替える。

「あ、大樹!」

「えっ?」

でも、突然外を指差してそんな事を言う健さんに、簡単に反応してしまう。

気づけば、靴を掴んだまま靴箱の裏に隠れてる私。

「嘘だけどね」

「はぁぁぁ~」

心臓に悪い。

「なんだ、まだ捨てきれてないんじゃん」

こんな動揺してしまった後に、何を言っても言い訳にしかならない。

「だったら、どうなんですか」

口を尖らせて靴を履いた。
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