Bloom ─ブルーム─
カラオケより丸刈りの方が恐いみたい。

先輩は仕方ないか、と、歩き出す。

もう行っちゃうんだ……。

ちょぴり、ガッカリ。

私だけ屋上に残るわけにもいかず、その後を重い足取りで続く。

「そうだ!」

ふと思い出したように振り返る彼は、少し屈んで私の顔を覗きこんできた。

「鍵の事、絶対秘密だよ?」

人差し指を口元にあてて。

秘密?

「は、はい」

あまりにも間近で、そんな特別な言葉をもらったら、平常心保てなくなる。

私達の“秘密”。

またここでこうして話せるのかな。なんて勝手に想像してしまう。

「じゃ、行ってくるかー」

屋上を出ると彼は、気が向いたらキミもおいでねと言い残して体育館に向かって行ってしまった。

行くあてはないし、そろそろ戻らないと友里亜もきっと心配してるはず。

のんびりだけど、私も体育館を目指し歩きだした。

< 26 / 315 >

この作品をシェア

pagetop