Bloom ─ブルーム─
「ねぇ、里花里花里花!ちょっと里花!」

翌朝、気だるい体を引きずるようにして登校した私を玄関で待ち構えていたのは、なぜかひどく元気な杏奈だった。

「なぁに?」

「なにその腫れぼったい顔。寝不足?」

「おかげさまで」

あんなことがあって、眠れるはずない。

「それはいいとして」

いいんですか?

「あのさ、山本先輩の携帯番号知ってる?」

「は?」

「もう、こうなったら直人に協力するしかないからさ、私が友里亜から山本先輩を奪うわ!」

妙に力の入った杏奈。

あ、その後の展開、知らないんだ。

「それは、多分、杏奈が頑張らなくても、大丈夫だと思うよ?」

とりあえず様子を窺いながら言葉を探す。

なるべく、オブラートに包んだ感じで。

そしたら、察したのか

「やっぱ、あれ、別れ話だったの?」

空元気が、急に沈みこんだ。

なんだ。

私の顔を腫れぼったいって言ったくせに、杏奈だって私以上の腫れぼったい顔をしてるじゃない。

どれくらい泣き明かしたんだろう。

でも、多分同情されるのが嫌いなんだ。

大丈夫?って聞こうとした私に

「そっか、そっかぁ。そうなんだ。じゃあ良かった良かった。うん」

杏奈はまた空元気を顔に貼り付けて笑い出した。

ちょっとだけ、痛々しい。

無理して笑うのを見てる方が辛いって言ってた友里亜の言葉の意味を、今知った気がした。
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