Bloom ─ブルーム─
しばらくして着いた体育館は、人混みと熱気でムンムンしていた。

他より気温が3度くらい上がってる気がする。

この人だかりの中、チビな私が友里亜と直人の姿を探すのは容易ではないかも。

けど、さっきの彼を見つけるのは、ひどく簡単だった。

いや、姿というより声を先に、私の耳がみつけていた。

体育館の中央でマイクを持っているらしく

「キミが歌いなはれ!」

彼の声がスピーカーを通じて聞こえてきたんだ。

どうやらステージ上にいる男子に向かって話してるらしい。

大ちゃんが反抗した!反抗期だ!なんてみんなが中央に向かって体当たりしてる。

あの中に彼がいるなら、きっともみくちゃにされて、大変だろうに。

でもなんとなくわかる。馬鹿にされてると言うか、彼は多分みんなに可愛いがられてるんだ。

さっきの少年ぽい彼を思い出し、なんとなくオモチャにしたくなる感じがわからないでもなかった。

そして、みんなに引きずられて、ステージに上る彼。

あーもー、なんて頭を抱えてるけど、笑顔な彼も、多分そんなみんなが大好きなんだろうな。

仕方ないという風に歌い出した曲はやっぱり校歌で。

みんなに突っ込まれ、山本先輩とギターの人からの飛び蹴りをくらってる。

──あれ?

ステージを見て、違和感に今気づいた。

山本先輩が飛び蹴りを入れた後、また1歩下がってそこにいた女の子の隣に戻る。

その女の子は……

「友里亜?」

びっくりしすぎて声が裏返ってしまった。

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