Bloom ─ブルーム─
「手紙?」

不思議そうに訊ねる友里亜に

「杏奈のいたずらだよ、きっと」

笑ってみせる。

“杏奈”という名前を聞いて、友里亜はまた申し訳なさそうに目を伏せていた。

「大丈夫だよ。杏奈は強いし、今朝も直人の為に友里亜から山本先輩奪うとか言ってたんだから。

そこまでして、直人の恋を応援しようとしてる杏奈の為にも、幸せにならなきゃね」

そう言うと、友里亜はまた複雑な顔をして微笑んだ。


杏奈、1人で帰りたくないのかな。

痛々しい笑顔を思い出す。

何だかんだ言っても、本当は寂しいんだ。

その気持ちは痛いほどわかるし、出来れば力になってあげたいんだけど。

でも、放課後のラーメン屋か……。

ラーメン屋に行けば確実に大樹先輩に会ってしまう。

って言うか、行く前にきっと会ってしまう。

そしたら先輩は私を見て、昨日みたいに普通に話しかけてくるんだろうか。

それで、何事もなかったように「2ケツする?
」なんて言うんだろうか。

「オマジナイ効きそう?」とかって……笑うんだろうか。

それに対して、私はやっぱり平気な顔してなきゃいけないの?

諦めなきゃならないのも、立ち直らなきゃならないのも、昨日の出来事を気にしちゃいけないのも、全部頭ではわかってる。

普通に話しかけてもらえたら、また友達に戻れるかもしれなくて、それは私の望んでることなはずなのに。

なのに……。

でも、心が追い付かない。


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