Bloom ─ブルーム─
でも、満足そうに微笑む彼が目の前にいるから、きっとこれでいいんだ。

背伸びする必要なんてない。

「そう言えば、髪……似合うね」

頭を撫でながらそう言う眼差しが、そのままの里花でいいよって言ってるみたい。

いいように解釈しすぎかな?

「これ、どんな曲?」

握りしめていたノートにまた視線を落とし、私が訊ねると、先輩は

「聴きたい?」

と言って手のひらを上下に合わせた。

あれ?嫌な予感。

そして、口を縦に開き歌う準備を整える彼。

やっぱり。

「先輩!この歌じゃないの?校歌はやだ!」

絶対今の流れからして、新曲披露かと思うじゃない?

なのに、間違いなく合唱団的な歌声を出すつもりだった!

先輩は、バレた?って大笑いしてる。

もう。

私は先輩の肩をペシペシ叩いた。

そしたらやっぱり、「いたッ!いってー!」って大袈裟に痛がる先輩。



ゴーッという飛行機がそんな私達の頭上を通り抜ける。

それは、突き抜けるような青空をぐんぐん進んで。

小さくなっていった。

残念ながら、飛行機雲を残して行ってはくれなかったけど。



空に消えていった飛行機を眺めながら

「里花、ありがとね?」

先輩は少しだけ恥ずかしそうに言った。

「え?」
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