Bloom ─ブルーム─
「毎年ね、全国規模のアマチュアバンドのコンテストっていうのが開催されるんだけど。昔親父もそのコンテストで準グランプリを獲ったらしくて」
「え?お父さん?」
お父さんもバンドやってたの?
「あれ、言ってなかったっけ?親父もバンドのボーカルやってたんだよね」
知らなかった。
じゃあ、先輩の美声はお父さん譲りなんだ。
「やってた……ってことは、やめちゃったんですか?」
「うん。俺が産まれるよりずっと前にね。
じいちゃんの会社継がなきゃならなくて、無理矢理見合いさせられて、夢もその当時の恋人も奪われたんだって。
感情の抜けた冷めた目をしてる親父が、俺は嫌いで仕方なかったんだ。
けどさ、結局最終的に決断したのは親父じゃん?奪われたんじゃない。捨てたんだよ。
そんな捨てた男を忘れずに想い続けたヒロコに感謝しろっつーの」
ヒロコ?
その名前が、化粧水の裏に書かれた文字とリンクした。
その瞬間、先輩がふっと笑みをこぼす。
「でも、大嫌いな親父を俺らは全然越えられなくてさ。今年のコンテストもグランプリどころか、本選すら行けなかったんだ。すげー悔しかった。
けど、絶対負けない。
っていう気持ちがもしかしたら俺の原動力になってるのかも。
来年、また勝負するつもりなんだ。ライブでやったコピー曲で出場する予定だったんだけど」
私が持っていたノートを指差すと
「やっぱり、この曲で」
と、先輩が言う。
「え?お父さん?」
お父さんもバンドやってたの?
「あれ、言ってなかったっけ?親父もバンドのボーカルやってたんだよね」
知らなかった。
じゃあ、先輩の美声はお父さん譲りなんだ。
「やってた……ってことは、やめちゃったんですか?」
「うん。俺が産まれるよりずっと前にね。
じいちゃんの会社継がなきゃならなくて、無理矢理見合いさせられて、夢もその当時の恋人も奪われたんだって。
感情の抜けた冷めた目をしてる親父が、俺は嫌いで仕方なかったんだ。
けどさ、結局最終的に決断したのは親父じゃん?奪われたんじゃない。捨てたんだよ。
そんな捨てた男を忘れずに想い続けたヒロコに感謝しろっつーの」
ヒロコ?
その名前が、化粧水の裏に書かれた文字とリンクした。
その瞬間、先輩がふっと笑みをこぼす。
「でも、大嫌いな親父を俺らは全然越えられなくてさ。今年のコンテストもグランプリどころか、本選すら行けなかったんだ。すげー悔しかった。
けど、絶対負けない。
っていう気持ちがもしかしたら俺の原動力になってるのかも。
来年、また勝負するつもりなんだ。ライブでやったコピー曲で出場する予定だったんだけど」
私が持っていたノートを指差すと
「やっぱり、この曲で」
と、先輩が言う。