Bloom ─ブルーム─
「予選会の時に、審査員に言われたんだ。上手くてもグランプリは獲れないって。惹き付ける力と勢いとタイミングが大事だって。

それで、もうひとつ大切なものがあるんだけど、それが何かわかる?って聞かれて」

「もうひとつ?何だったんですか?」

「教えてくれなかった」

先輩は私を見下ろして首を振る。

「けど、もしかしたらそうかもしれないっていうのが、やっと見えた気がする」

何だろう。

大切な何か。

それを見つけたら……そうかもしれないって思うそれがアタリなら、先輩は夢を掴めるのかな。

「確実に言えるのは、耳に穴開けることで運命変えようとした弱虫には無理だってこと。

自分で切り開かなきゃダメなんだって、里花に会って気づいたよ」

先輩は耳たぶを触りながら、「バカだなぁ、俺」って照れ笑いをしていた。

私の鞄からは、油性ペンを取り出した時に頭を覗かせた紙飛行機がこっちを見てる。

健さんが雑に折った後に直人と折り直したから、あちこちに無駄な線がたくさん入った飛行機。

あちこち寄り道して辿り着いた私達の今日みたい。

その紙飛行機を手に取ると、屋上の扉の方へ向けてスーッと飛ばしてみた。

あの時落ちるだけだったそれは、今度はふんわり空を翔る。

直人が教えてくれた空気抵抗を抑えた折り方は、ただの紙をこんなにも遠くまで飛ばしてくれる。

同じ紙飛行機でも、折り方次第でどうにでもなるんだ。

それなら。
< 299 / 315 >

この作品をシェア

pagetop