Bloom ─ブルーム─
ボールペンを拾いあげると

「あいたたごめんよ、そのひょうし、忘れた忘れたお使いを♪」

おつかいありさんの動揺を思い出し、小さく口ずさんでいた。

「あっちいって、ちょんちょん、こっちきてちょん♪」

でも、その続きを歌ったのは、私ではなかった。

「秘密の場所にご招待しましょうか?」

私の鼻歌とは比べ物にならないくらいの、激うま動揺を歌った後、屋上の鍵を見せてニッコリ微笑んだのは、長谷川大樹だった。

「……どうして?」

1人寂しく感傷に浸ってるこんな時に、そんな風に現れるのは反則だと思う。

「屋上から見る花火は最高だと思って」

そっか。

もう少しで花火大会の時間になるんだ?

「呆気なくふられちゃって、いやー恥ずかしいのなんのって。あんな公の場で、もー私ったら。あ、先輩丸坊主まぬがれました?そっか歌ってましたもんね?校歌だったけど!まさかの校歌!飛び蹴りにはびっくりしましたよー」

こんなとこでションボリしてる自分を見られるのが妙に恥ずかしくなって、私は思い付く限りの言葉を探して話し続けた。

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