Bloom ─ブルーム─
「おいで」

でも、聞いてるのか聞いていないのか、鍵をガチャガチャと開けた先輩は、私を優しく見下ろして手招きする。

そして、先輩の好きな場所まで行くと、手すりにもたれて薄暗くなった空を眺めながらゆっくり口を開いた。

「たまにさ、すごい疲れる時ない?」

「え?」

「空気壊さないようにとか、嫌われないようにとか、周りばっかり気にしすぎて、疲れる時、ない?」

「……」

「強がって笑って、それが楽しいはずなのに、なんでか突然フッと力抜けるっていうか……」

「……」

「周りには友達がたくさんいるはずなのに、スゲー寂しくなるとき、ない?」

なぜだか泣きそうになった。

その言葉が、ちょうど今の私の気持ちと重なっていたから。

でも、私よりもずっと、先輩の見せる背中の方が寂しそうに見えた。

「どう……でしょう?」

そんな背中になんて答えたらいいのかわからなくて、曖昧な返事しかできない。

「また強がった」

振り返った先輩は私の顔を見て、そして笑った。

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