Bloom ─ブルーム─
「ま、ままま待って。里花はなんで私が直人を待ってたと思ったの?」

そんな私の制服の裾を掴んだ友里亜は、立ち上がりかけた私を再び椅子に戻した。

「そんなの、見てれば簡単にわかるよ。いつも好きな人できたとか言って手の届かない人の名前挙げて、直人の気を引いてたじゃん」

「……じゃあ、直人の気持ちも?知ってたの?」

「うん。かなり前から」

「なんで、教えてくれなかったの?」

そんなの

「私が言うべき事じゃないもん」

未だに直人の気持ちを知って戸惑っているみたい。

友里亜は苦しそうに俯いていた。

「気持ちの整理ついてからでもいいからさ、ちゃんと直人に話さなきゃダメだよ?」

念を押すように話すと、私は前を向いて授業の準備をし始めた。

窓際の私達の席からは玄関と校門が見える。

これから体育の授業があるのか、数人の男子がジャージ姿でグラウンドに向かって走っていくのが見えた。

「あ……」

その中に、長谷川大樹の姿を見つけてしまった。

人生全てが楽しくて仕方ないみたいな、無邪気な少年の顔して。

悩みとかなさそう。

ボーッと先輩の姿を見ていた時、

「もう、遅いの」

友里亜の消えてしまいそうなほどの小さな声が耳に届いた。
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