Bloom ─ブルーム─
ちょっと待って?

直人の顔を見て、大事な忘れ物に気づく。

ギターとドラムに勝つことに必死で、ベースと一緒の友里亜を忘れてた!

「友里亜!」

「へっ?」

下り坂の途中なのにもかかわらず、私はブレーキに指をかけると一気に握りしめた。

突然かけたブレーキに、自転車の後部が軽く持ち上がり、力を抜いていた長谷川大樹が前のめりになる。

そして、あっけなく自転車から振り落とされた。

「うあぁぁぁっ!」

「だ、大丈夫!?」

その反動で、右に傾いたハンドルはさらに右に曲がったっぽい。

「ってぇ。ブレーキかける時は徐々にでしょぉ。もう一度自転車講習受け直しなさい」

お尻をスリスリしながら、意外に無事だった長谷川大樹が苦笑いする。

「ごめんなさい」

「あいつはバカだけど悪いヤツじゃないから、心配いらないよ」

「え?」

パンパンと汚れを払うと

「友里亜ちゃん、気になったんでしょ?」

しょうがないなぁっていう風に、彼はポケッとした私の鼻をつまんだ。

笑ってばかりで余計な事あんまり考えてなさそうだったのに、ちゃんと気づいてくれたんだ。

ふーん。なかなかやるじゃん。なんて、心の中で必死に上から目線。

そうでもしないと、突然掴まれた胸の内がトクンと声をあげそうだったから。

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